福島県立医科大学医学部 泌尿器科学講座


■代表的疾患→女性泌尿器科

@泌尿器科腫瘍 C女性泌尿器科 F腎不全 I不妊症 L性感染症
A前立腺肥大症 D過活動膀胱 G腎移植 JED・男性更年期 M小児泌尿器科
B神経因性膀胱 E間質性膀胱炎 H泌尿器科外傷 K尿路結石 N腹腔鏡

女性泌尿器科

・はじめに
 女性泌尿器科は,女性特有の膀胱や尿道,性器のさまざまな不具合を診断治療する分野です。具体的には頻尿,尿失禁,性器脱,間質性膀胱炎,膀胱膣瘻などがあげられます。ここでは最も頻度の高い,尿失禁についてお話します。

・尿失禁
 あなたご自身かあるいはあなたの身近にいる方が,尿もれでお悩みではないでしょうか?悩んでいるのはあなたひとりではありません。尿失禁は,全成人女性の約25%に認めるといわれています。60歳以上ではこの値は約40%にもなります。こんなに多くの女性が尿失禁を有するというのに,医療機関を受診される方は実に少ないのです。
尿失禁というのは病名ではありません。これは症状です。尿失禁をきたす原因は色々あって,専門医はまずこの原因をつきとめます。そしてその原因に即した治療法を選択するわけです。

・ 尿失禁の原因
 原因に基づいて女性尿失禁を分類すると,@腹圧性尿失禁,A切迫性尿失禁,B混合型尿失禁の3つのタイプに分けられます。尿失禁で困っているほとんどの女性がこの3つのうちのどれかに該当します。頻度は@が約40%,A,Bが各々約30%です。
  • @腹圧性尿失禁;これは,おなかに力が入った時に不意に尿が漏れてしまうものです。たとえば咳,くしゃみ,ジャンプ,重いものを持ち上げるなどの動作で,腹圧が上昇し,この圧が膀胱にも伝わって尿もれを生じます。このような尿失禁では,膀胱(尿をためておく筋肉でできた風船のようなもの)は異常ないのですが,膀胱の出口にあたる尿道の“しまり”が悪くなっています。そもそも尿道は,おしっこをする時以外はぴたっとしまっていて,たとえ急激に腹圧が上昇する状況にあっても,一滴も尿をもらさない巧妙な構造になっています。この機構が様々な原因で破綻すると,腹圧性尿失禁を生じるわけです。
  • A切迫性尿失禁;これは,尿道側の尿をもらさないための機構は正常なのですが,膀胱が自分の意志とは関係なく縮んでしまうために起こります。通常膀胱は,かなりの尿をためて排尿しようとする時まで,けっして縮みません。ところが切迫性尿失禁の方では,ある程度尿がたまると強い尿意とともに膀胱が縮み,尿が漏れるわけです。したがって切迫性尿失禁では「おしっこがしたい!あーっ,もれちゃう!」といった切迫感を伴うのが大きな特徴です。このような縮みやすい膀胱を過活動膀胱と呼んでいますが,原因はまだ不明です。
  • B混合型尿失禁;腹圧性と切迫性の両方を持っているものです。

・尿失禁の治療
 腹圧性尿失禁の治療は,保存的療法と手術療法に分けられます。保存的治療には飲み薬や骨盤底筋体操などがありますが,薬はあまり期待できません。基本は骨盤底筋体操で,腹圧上昇時にうまく尿道周囲の筋肉を収縮させることができれば,尿失禁量はみるみる減少します。ただしこれにはこつと根気が必要です。当科には強制的に骨盤底筋を収縮させて鍛える,磁気刺激装置も導入されています。これは着衣のまま刺激装置の椅子に腰掛けているだけで,筋肉が鍛えられるもので,患者さんによっては良好な結果を得ています。また保存的治療が奏効しない場合,手術療法を選択します。ただしこれは開腹したりするような大きなものではありません。膣に約1.5cm,下腹部に約1cmの切開を置き,尿道の下にメッシュ状になった細いテープを挿入するだけのもので,1時間以内に終わります。この手術は新しい方法で,世界的にも急速に広まりつつありますが,我々はすでに多数例の経験があり,この手術を行った全ての女性が尿もれから開放されています。

 切迫性尿失禁は,尿道が緩んでしまっているのではなく,膀胱がかってに縮むために起こることをお話しました。この縮みやすい不安定な膀胱を抑えるには抗コリン剤という飲み薬を使います。口の中が乾いたり,便秘しやすくなるなどの副作用が見られる場合もありますが,多くの場合とてもよく効きます。切迫性尿失禁では,一般におしっこが近く(頻尿),急に寒い戸外へ出た時,水道の流れる音を聞いた時,あるいは冷たい水に触れたときなど,急に強い尿意がしてもれてしまうというのが特徴ですが,これら症状は薬でよく改善します。

 実は尿失禁だからといって,切迫性尿失禁に有効な抗コリン剤を服用していて,尿もれがいっこうに良くならないと訴える腹圧性尿失禁の女性をよく見うけます。はじめにお話したように,腹圧性尿失禁を完全にお薬で止めるのは難しいことが多いのです。

 なお,腹圧性尿失禁の女性によく見られるものとして,子宮や膀胱などが膣内に飛び出してしまう骨盤内臓器下垂というものがあります。これも手術により治すことが可能です。尿失禁でお困りの方,ひとりで悩んでいては何も始まりません。ぜひ勇気を出して受診してみてください。
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