HOME随想録 > 臨床泌尿器科編集後記Vol.68.No.7, 2014

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随想録

剣道と医道

先日二本松市にある城山総合体育館で行われた北医体剣道大会に、福島県立医科大学剣道部の応援のため行きました。剣道を生で見るのは久しぶりで、白熱した試合と真摯に取り組む学生さん達の姿に心を打たれました。
 私は小学校1年生から大学6年生まで剣道に励んでいました。正直言って、稽古があまりにも厳しかったため、やっている時は苦しいことばかりで、楽しいと思ったことはほとんどありませんでした。ただ今思えば剣道はたくさんのことを私に教えてくれたと思います。
 全日本剣道連盟は、“剣道は剣道具を着用し竹刀を用いて一対一で打突しあう運動競技種目とみられますが、稽古を続けることによって心身を鍛錬し人間形成を目指す「武道」です。”としています。また剣道には、全日本剣道連盟が制定した“剣道の理念”と“剣道修練の心構え”というものがあります。

剣道の理念:剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である
剣道修練の心構え:剣道を正しく真剣に学び 心身を練磨して 旺盛なる気力を養い 剣道の特性を通じて 礼節をとうとび 信義を重んじ 誠を尽して 常に自己の修養に努め 以って国家社会を愛して 広く人類の平和繁栄に寄与せんとするものである

 学生のころには、表面的な理解しかできなかった言葉ですが、この年になると、現在剣道をやっていないにも関わらず、この言葉の重みを感じます。この“剣道”を“医道”という言葉に置き換えてみました。Wikipediaによると、“医道(醫道)とは、日本律令制における医療そのものあるいはそのための教育(医学教育)を指す。今日でも、医道審議会などで医学のことを「医道」と称すのはその名残である。”とあります。日本律令制は、概して7世紀後期(飛鳥時代後期)から10世紀頃まで実施されたとされていますので、1400年も前からの制度です。ちなみに、剣道は、古武道の剣術のうち江戸時代後期に発達した防具着用の竹刀稽古(撃剣)を直接の起源としているようですので、医道は剣道より歴史が長いことになります。
 さて、私たち医師の職務は、言うまでもなく患者さんにより良い医療を提供することです。その一方で、そのことが自分自身の成長や人間形成を伴ったものでなければならないと最近強く感じています。私が福島県立医科大学に着任してから2年が経ちました。特に大学の使命は、臨床、研究、教育の3本柱をなすことです。当然のことながら、いずれも大切で、甲乙付けがたいものです。ただ、敢えて言うのであれば、医師教育・医学生教育が、私にとって最も重要な職務であると考えています。“剣道”と同様、”医道“を通じて、自己の修養に務め、人間形成をなし、広く社会に貢献する。これが本来あるべき医師の姿だと確信しつつ、剣道の応援を終え帰路につきました。

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