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随想録

臨床泌尿器科 Vol.68. No.10. 2014 編集後記より

小島祥敬

 小学1年生から剣道をはじめ、大学6年間も剣道部に所属しました。昨年から縁あって福島県立医科大学剣道部の顧問をお願いされました。新入生歓迎コンパ(2次会まで)はもちろんのこと、北日本医科学生剣道大会にも応援に行きましたし、この夏は猪苗代で行われた剣道部の合宿を訪問しました。当初は差し入れのスイカを3つ置いて、すぐに帰るつもりでしたが、学生からの“部屋を用意してありますから泊まっていってください”というお誘いを断り切れず、一泊することにしました。食堂でご飯を一緒に食べて、コンビニで買い出しをし、大浴場に入って、お酒を飲んで、星座観察をしました。ちょうど、みずがめ座δ流星群が観察できる時期で、生まれてはじめて流れ星を見ることができ感激しました。そして、準備されていた部屋は大部屋で、消灯時間10時半をしっかり遵守し、学生達と“雑魚寝”をしました。正直、若干抵抗はありましたが、青春時代に戻ったかのような錯覚に陥り、何とも清々しく心地よい気分でした。翌日、早朝の一斉清掃とラジオ体操はさすがに遠慮して、大学に大急ぎで帰り、現実に戻り朝から手術をしました。

 平成16年に新医師臨床研修制度が始まって以来、泌尿器科医の減少や地域偏在が危惧されてきました。福島県は、地方であることに加え、東日本大震災と原発事故により医師の県外流出が後を絶たず、とうとう医師数が全国で2番目に少ない県になりました。

 若い医師の不足でご苦労をなされている方もいらっしゃると思いますが、皆さんはどのような活動をされているでしょうか?学生や研修医に魅力的だと思われる質の高い医療や研究を行う努力をすることはもちろん最低限のことなのでしょうが、私は原点に立ち返って、教育者の端くれとして、(下心を持つことなく)学生や研修医と真摯に向き合うことこそ最も重要なことと考え(心改め)、学生や研修医との接点を大切にしています。皆さんもされていることかもしれませんが、できる限り毎週のように食事にでかけいろいろな話をしますし、学生実習の総括も他人に任せることなく、毎回2〜3時間を費やします。学生や研修医向けのセミナーや体験実習を企画していますし、講義も気合を入れて準備し心をこめて行うように心がけています。

 若い泌尿器科医の減少や地域偏在は、いずれわが国の経済と同様に“失われた20年”をもたらすかもしれません。患者さんにより良い医療を提供しようと思っても、人手不足では良い人材も育ちませんし、泌尿器科の発展もありません。まさに今わが国が直面している少子高齢化、地域格差の縮図です。昨今のドライな学生や研修医に、勧誘のために、不必要に時間を費やすことは意味がないという意見もありますが、私はあくまでも教育の一環として、今はこういう時間を大切にしたいと思っています。

 ところで、合宿を共にした剣道部の若者達。この時代にあっても、礼儀正しくさわやかで、この国もまだまだ捨てたもんじゃありません。

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