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随想録

臨床泌尿器科編集後記Vol.68.No.13, 2014

 10月から、中国・武漢大学人民医院の3名の医師が、大学間国際交流として福島県立医科大学に留学しています。そのうち1名が、昨年と同様泌尿器科学講座に配属となりました。約2か月間日本に滞在し、手術を見学していきます。私たちより英語を流暢に話すので、医局員に大きな刺激になればと楽しみにしています。彼の病院は、私たちの病院よりはるかに大きな病院で手術件数も多いようですが、手術の多くは尿路結石で、前立腺癌は少ないようです。したがって、ロボット支援手術が新鮮に映るようで、熱心に見学しています。彼にとって充実した2か月間になればと思っています。

 文部科学省のホームページによると、2011年の日本人の海外留学者数は、57,501人と集計しています。2004年の82,945人をピークに減少の一途をたどり、対前年比においても559人(約1.0%)減、ピーク時に比べ約30%減少しています。海外留学者減少の原因は、@少子化、A国内の大学の国際化、Bインターネットの普及などが考えられています。しかし、最も危惧されることとして、最近の若者が“内向き志向”になっており、それが海外留学減少の原因の1つとなっているとの指摘です。

 海外留学の目的は、@高い臨床・研究レベルに触れること、A語学力の向上、B国際理解、C社会経験や人間的成長 などが挙げられると思います。私ごとで恐縮ですが、2008年にロボット支援手術の勉強のため、米国に留学しました。私が留学して得ることができたことの1つは、高い臨床レベルに触れられたことで、現在の医療に活かされています。しかし、それ以上に得られたことは、幅広い人間関係を構築することができたことだと思っています。留学先のスタッフとはもちろんのこと、当時のレジデント達とも、いまだにメールでやりとりをし、国際学会に行けば必ず一緒に食事をします。私の拙い英語を一生懸命聞いてくれ、理解してくれようとします。臨床や研究のことのみならず、さまざまな情報を共有することができます。そしてそういったつながりは、その後も自然と広がり、私にとっての大きな財産となっています。

 私たちの教室では、毎年6月に研修医や学生を対象とした、「研修医・医学生のための泌尿器科プライマリケアと腹腔鏡セミナー」を行っています。この3年間、私がショートレクチャーを担当して、泌尿器科の魅力を伝えるように努めてきたのですが、今年のタイトルは、“留学・研究のすゝめ”としました。私の基礎研究(国内留学)や海外留学の経験を、少しでも若い研修医や学生に感じてもらいたかったからです。価値観が多様化している今日の複雑な社会において、必ずしも海外に留学することがよいとは言えないのかもしれません。ただ、未来を担う若い先生方には、ぜひとも“外向き志向”で、海外で広い意味での武者修行をして、多くのことを学び、将来に役立ててほしいと切に願っています。

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