HOME随想録 > 臨床泌尿器科編集後記Vol.69.No.3, 2015

ようこそ、福島医大泌尿器科へ

随想録

臨床泌尿器科編集後記Vol.69.No.3, 2015

 2014年5月に一般社団法人日本専門医機構が設立され、専門医制度が大きく変わろうとしています。これまで各学会の主導により専門医の認定・更新がされてきましたが、今後は専門医機構が行うことになります。専門医認定に関しては、今年4月の新初期研修医が2017年から専門研修を開始し、専門医更新に関しては、暫定的措置期間を経て2020年から新制度が適用されます。日本泌尿器科学会でも、専門医制度審議会委員長の市川智彦教授が中心となられて、泌尿器科の『専門研修プログラム整備基準』『専門医認定更新基準』の作成に大変なご尽力をなされておられます。新制度に対しては賛“否”両論ありますが、敢えてその利点について、客観的に私見を述べさせていただきます。

 1つ目は、専門医が公的に保証されることです。専門医機構によると、従来の専門医制度は各学会に任されていたため、質の保証や認定の標準化の面で問題があったとし、今後は専門医機構が認定した研修プログラムを基盤とすると定めています。確かに、近年数多の専門医や認定医制度が存在し、国民目線でみればわかりにくい面があったことは否めません。横並びの制度であれば、医師の裁量権を狭める可能性もあります。専門医や認定医コレクターが私の周りにもいたのも事実です。新制度では、公の資格として専門医の質を保証し、患者が受診する良い指標となることが目的とされており、今後専門医としてのpriorityが整備されれば、素晴らしい制度になりうるのではないかと思います。

 2つ目は、専門医の到達目標として、専門知識や技能の取得のみならず、学問的姿勢(科学的思考、課題解決型学習、生涯学習、研究などの技能と態度)を重視している点です。新制度整備指針には、専門医研修と基礎ならびに臨床研究との両立を図る専門研修プログラムの構築の必要性が述べられています。平成16年に新医師臨床研修制度が始まって以降、一部の若い先生が小手先の知識や技能ばかりを追い求めることに終始し、自ら立ち止まって物事を深く探求しようとする学問的姿勢が疎かになっているのではないか、そのことが結果的に医師としての資質を低下させる可能性があるのではないかと危惧していました。実際に、専門医や認定医を取得することには全力を尽くすが、じっくりまとまった研究をして学位を取得する若い先生が減っていると聞きます。新制度により、学術的思考を養う機会が増え、医師の資質向上につながればと期待しています。

 3つ目は、地域研修の必要性が明記されていることです。新医師臨床研修制度により、確実に地域医療は崩壊しています。新制度が、地域医療復活の一助になることを期待しています。

 一方、多くの先生方がご指摘のように、新制度には問題もあります。また実際に運用されることにより、様々な問題点が浮き彫りになると思います。これらの問題点に、行政や専門医機構が柔軟に対応していただき、国民の健康、医師の資質向上とともに、私たち医師の専門医としての地位がしっかり保証されることを願っています。

ページの先頭へ