HOME随想録 > 臨床泌尿器科編集後記Vol.69.No.7, 2015

ようこそ、福島医大泌尿器科へ

随想録

臨床泌尿器科編集後記Vol.69.No.10, 2015

 2013年に某私立中学の理科の入学試験で、以下の問題が出題されました。“右図は、99年後に誕生する予定のネコ型ロボット、「ドラえもん」です。この「ドラえもん」がすぐれた技術で作られていても、生物として認められることはありません。それはなぜですか。理由を答えなさい。”皆さんのご解答はいかがでしょうか。

 さて、今月号の特集は、「ロボット時代の泌尿器科手術―前立腺癌に対する新たなスタンダード」でした。そもそもロボットという言葉の由来は何か。Wikipediaによると、1920年に、チェコスロバキアの小説家カレル・チャペックが発表した戯曲『R.U.R.』の中で、ロボットという言葉が初めて登場したようです。「労働」を意味するチェコ語“robota”がその語源になっているそうです。実際に『R.U.R.』において登場するロボットは、原形質を化学的合成で似せて作った、人間とは異なる組成の肉体と人間そっくりの外見を持つもので、SFで言うバイオノイド(有機的人造人間)だそうです。私がロボットと言われて思い出すのは、子供のころ熱中したマジンガーZやガンダムなどで、操縦席に、兜甲児やアムロ・レイが座り、巧みなテクニックでロボットを操縦し、敵(悪)を退治するいわゆる操縦士一体型ロボットです。一方、チャペックが描いていたロボットは、自分の意志で体を動かすことができる自己完結型ロボットと思われ、鉄腕アトムやドラえもん(無機的人造人間)もそういう意味ではこれに当てはまります。しかし、今日私達が用いている手術用ロボット da Vinciは、もともと米国本土または米国空母から、遠隔操作で戦場の負傷者に対して手術を行うことが目的で開発されたもので、人間の操作を必要とするいわゆる遠隔操作型ロボットです。そう考えると、まだまだda Vinciは、未来をテーマにしたアニメからすれば、発達途上の“おもちゃ”にすぎないのかもしれません。いずれ鉄腕アトムやドラえもんが、癌を退治してくれる日がくるのかもしれません。

 アメリカ人SF作家アイザック・アシモフは、1950年に刊行された著書I, Robot(ウィル・スミス主演の同名映画が大ヒットしました)の中で、ロボットの行動を支配する3原則を提示しています。これが現在でも、ロボット工学の3原則とされています。その第1条は、“ロボットは、人間に危害を加えてはならず、また人間に危害が加えられるのを見過ごしてはならない”とされています。巻頭言で述べたとおり、da Vinciの登場により、これまでの開放手術や腹腔鏡手術と比較して、視野も格段によくなり、操作性も簡便になりました。ただ、手術そのものが簡単になったわけではないと思います。なぜならば、より高い目標設定を掲げなければならないからです。合併症も断端陽性率も、術後尿禁制も性機能も、従来手術よりも著しく改善させるように、弛まない努力をし、私達自身も絶えず“成長し続けること”が、私達に課せられた使命だと思います。

 ちなみに、某私立中学入試問題の模範解答は、“ドラえもんは、「自身が成長したり、子をつくったりする」という、地球上の「生物」に共通する特徴をもっていないから“だそうです。

ページの先頭へ