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随想録

臨床泌尿器科編集後記Vol.70.No.7, 2016

 第104回日本泌尿器科学会総会において、男女共同参画シンポジウム「男女共同参画活動の現状と今後」のシンポジストにご指名いただきました。正直に言って、私自身はこれまで男女共同参画事業にはほとんど疎かったので、発表にあたってはかなりの時間をかけて勉強しました。本企画に参加させていただいたことは、私にとって大変貴重な経験で、荒井陽一会長をはじめ関係者の方々には心から感謝申し上げます。

 さて、生物のオスとメスへの性分化は、種によって多様なメカニズムを有します。無脊椎動物であるカタツムリは、オスとメスの機能を同時に有しています(同時的雌雄同体)。交尾の際にお互いの精子を交換し、ともに産卵します。魚類には、オスである時期とメスである時期が明確に分かれる種類がいて(機能的雌雄同体)、例えばクロダイは成長とともにオスからメスに性転換(雄性先熟)します。またホンソメワケベラは集団で生活し、最大の個体が常にオスで一夫多妻制をとります。しかしそのオスを取り除くと、2番目に大きかったメスがオスに性転換(雌性先熟)します。生物学的に生命体の存在意義というのは、「子孫を残すこと」だそうです。したがってこれら生物の性分化機構は、子孫を効率的に残すための戦略だと考えられています。究極の “オスメス”共同参画です。

 私たち人間は、最高の知能を持つ生命体に進化しました。国連の2014年版「世界人口白書」によると、世界人口が72億人を超えたと推計されています。そういう意味でも、“生命体の存在意義”の獲得に大成功した生物です。しかしその一方で、わが国日本では、少子化による人口減少社会となりました。著しい進化を遂げた一方で、本来の生命体としての目的を、豊かな社会の中で無意識のうちに忘れ去ってしまったのかもしれません。少子化の原因はさまざまですが、そのひとつとして、依然として厳しい女性の就労環境、子育て世代の男性の長時間労働などが指摘されています。

 男女共同参画社会の実現は、男女相互理解のもとに成り立ちます。私たちの先祖たちは、種の保存・繁栄のために雌雄同体という形を維持することにより、相互理解に努めているというのは言い過ぎでしょうか?いずれにしても、本シンポジウムに参加して、男女各々の“義務”と“権利”の両方がきちんと整備された制度の上で、男女いずれもが働きやすい職場環境を作る努力をさらにし続ける必要があると痛感しました。

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