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随想録

臨床泌尿器科編集後記Vol.71.No.7, 2017

 「まだ東北で良かった」という失言により、復興大臣が辞任に追い込まれ、新しく福島県選出の議員が任命されました。所信表明にて「被災者に“寄り添い”きめ細やかに対応してまいります」と述べられました。

 医療現場においても、患者さんに“寄り添い”という言葉が、最近流行り言葉のように使われています。これまで上司には、“患者さんの気持ちになって”と指導されました。かく言う私も、ここ数年同じようなことを言っています。しかし最近、これらの言葉がいかに表面的で、実行が難しいことを実感した出来事がありました。私ごとですが、先日心臓アブレーション手術を経験しました。昨年9月に突然倒れて、原因が発作性心房細動と診断されました。薬物治療は効果がなく、手術に踏み切りました。手術を受ける患者の立場になり、患者という視点で医療を客観的に観察すると、いろいろなことが見えました。私の結論は、「患者さんの気持ちは、患者になって初めてわかる」ということです。患者さんに“寄り添う”という言葉の重みを感じ、軽はずみに使う言葉ではないということを実感しました。そういう意味では、新復興大臣は自らが被災者であり、その職にふさわしい人物だと期待したいところです。

 手術の翌日、医局員がみんな揃って病室にお見舞いに来てくれ感動しました。手術当日夜に某大学の教授がわざわざ携帯電話にお電話を下さいました。日泌総会ではたくさんの先生から、「無事生還おめでとう」と温かいお言葉をいただきました。そして、4月の本誌編集委員会では、全快の祝いということでケーキをふるまっていただきました。細やかな優しさにこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

 昨年9月に倒れたときは、瞬時にもしかしたら。。。と覚悟もしたのですが、幸運にも命を救われ、後遺症もなく今まで以上に元気になりました。今回の件で患者さんの気持ちがちょっぴり理解でき、患者さんに“寄り添う”ことができる良い医師を目指して今後も頑張っていきたいと決意を新たにしました。

 ところで、今回の手術で私が一番苦しかったのは何だと思われますか?実は尿道カテーテル留置でした。挿入の瞬間もつらいものでしたが、何よりもそのあとの膀胱刺激症状や便意は耐え難いものでした。泌尿器科医としてこれまで数多くの患者さんにカテーテル留置を行ってきましたが、患者さんの気持ちが最もよく理解できた貴重な体験でした。

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