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随想録

臨床泌尿器科編集後記Vol.72.3.2018

一休さんで有名な一休宗純禅師の詩集『狂雲集』に詠われている一句に、「門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし」という有名な詩があります。「正月に新しい年を迎えることでまた年齢をひとつ重ね、飾られる門松がまるで冥土へと向かう道に築かれた一里塚みたいなものだ」という意味で、新年に浮かれる人々を皮肉り、骸骨の付いた杖をつきながら京都の街を闊歩したとの逸話もあるそうです。

本誌3月号の編集後記の締め切りが年明け早々のため、今この原稿を書いているのが年末、12月31日です。年末にもかかわらず、たくさんの積み残された業務の処理に追われ、まさに今の私にとって、きたる新年は「めでたくもありめでたくもなし」です。この原稿が読者の目に触れるのは年度末で、皆さんはさぞお忙しくされているのだろうと想像しながら筆を執っています。

日本では、年末(12月末)と年度末(3月末)と、1年間に2回の“区切り”を経験します。「年間予算が4月1日に執行を開始し、3月31日を締め日として年度で清算される」と財政法や地方自治法で定められており(出典:マネー用語辞典)、卒業や退職もそれに合わせているようです。会計年度の始期が4月1日となったのは明治時代で、秋に米を収獲した後、最終的に現金の収入から税収を得て予算を計上し執行するまでの時間を考えると、4月1日を年度始めにするのが合理的だったからという理由が1つのようです。(出典:NAVARまとめ)。しかし最近では12月を決算期にする会社が増えているようです。大学の始業も海外に合わせた方がよいのではないかとの意見もあります。個人的には、桜は新しい門出を祝う象徴、桜=入学式・入社式というイメージが定着しており、日本の文化にはそぐわないような気がします。

今年2度目の“区切り“を迎え、研究費などの執行業務や報告書に追われたり、移動による引っ越しの準備がある方もみえるかもしれません。送別会や学生の卒業式・謝恩会もあり、超多忙な毎日をお過ごしのことと思います。そして新年度を迎えても、しばらく落ち着かない日々が続くことでしょう。新年に1つ年齢(数え年)を重ねることと同様に、新年度には1つ学年が進級する。泌尿器科医として経験を1年積み上げる。責任の重みがひとつ増す。退職に1年近づく。この“門”出は「めでたくもありめでたくもなし」。さてこの年度末。皆さんの想いはいかがでしょうか?

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