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随想録

臨床泌尿器科編集後記vol.72.No.13, 2018

10月18日に発表された2018年度医師臨床研修マッチングの最終結果によると、定員充足率100%だったのは11大学で、そのほとんどは都会の大学です。(ちなみに本学は、充足率80大学中75位の41.86%、マッチ数18人でした。)充足率が30%未満の大学およびマッチ数が10人未満の大学は4大学あり、そのうち3大学が東北地区の大学で、依然として地域格差が著しいのが現状です。10月22日から、専門医プログラムの募集が開始されましたが、同様に都会に集まる状況が変わる気配はありません。シーリングという制度がありますが、若者にとっては、“泌尿器科ありき”ではなく、“都会に住むことありき”でしょうから、どこまで効力を発揮するかどうかは疑問です。これは、専門医機構が制御できる問題でもないような気がします。

さて先日の土曜日に、地元の高校1年生を対象に模擬講義を行いました。90分講義を2コマ、ロボット手術の話をしました。そして講義の後半に、震災以降の福島の医療の現状を訴えて、「これからの福島の医療は支えるのは君たちだ」と熱く語りました。1週間後に高校生の感想が送られてきましたが、講義を通して、ロボット手術ではなく、たったこの1フレーズが高校生の胸に最も響いたようです。震災からもうすぐ8年、福島の明るい未来を予感しました。

その翌日の日曜日、山形県東根市に車で片道約2時間かけて、本学ラグビー部6年生の最終試合を見に行きました。昨年の最終試合は福島県で開催されたのですが、横浜での学会を途中で抜けて、新幹線と在来線とタクシーを乗り継いで、台風の中ラグビー場まで往復しました。今年も6年生のラグビー部員からお願いされたこともあり、2つ返事で了解し応援に行きました。私自身はラグビーをやったことはなく、ラグビー部の顧問でもありませんので、ルールも曖昧なのですが、ただただ純粋にボールを追いかけぶつかり合う“生”のラグビーの試合を見ていると、鳥肌が立つほど感動します。昨年も今年も本学ラグビー部は圧勝。部員から私への感謝の気持ちを聞いたり、その後に送られてくるラインを読むと、教員冥利に尽きます。おそらく彼らのすべてが福島県には残らないでしょうし、将来泌尿器科医になるかどうかもわかりません。ただ、初期研修医や後期研修医の地域格差の現状を尻目に、こんな些細な出来事が、福島で働く「教育者」として少しだけ誇れる瞬間です。

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