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随想録

臨床泌尿器科編集後記 vol.76. No 3 ,2022

先日、日本泌尿器科学会のウィンターセミナーが神戸で開催されました。全国の初期研修医に「泌尿器科の魅力」を知ってもらうための恒例のイベントです。新型コロナウイルス感染症の影響で久しぶりの開催となりましたが、腹腔鏡実習や懇親会を中止するなど規模を縮小し、ハイブリット形式で行いました。

今回は、新たな試みとして2つシンポジウムを企画し、そのうちの1つ「泌尿器科の魅力を語る〜赤裸々告白 !! なぜ私は泌尿器科医を選んだのか?」では、事前に日本泌尿器科学会・会員にお願いしたWEBアンケート調査をもとに、「泌尿器科の現実」について野々村祝夫理事長と若手泌尿器科医4名による総合討論を行い、大盛況に終わりました。

専門医取得前の若手泌尿器科医120名に行ったWEBアンケートの中に、「泌尿器科の中でどの分野に興味がありますか?」という質問がありました。男女ともに第1位はダントツで泌尿器腫瘍(男性:2位が尿路結石、3位が腹腔鏡・ロボット支援手術、女性:2位が女性泌尿器科、第3位が腹腔鏡・ロボット支援手術)でした。腫瘍は多くの診療科で携わる医師が多いと思いますが、泌尿器科は他科と比較して診療対象臓器が多いことから多種多様です。診断方法も薬物治療や手術の方法もそれぞれ異なります。さらに開放手術、内視鏡手術、腹腔鏡・ロボット支援手術と多くの手術アプローチがあります。新規薬剤も続々と開発が進んでいます。言うまでもなく腫瘍は命に関わる疾患であることから、泌尿器科の中でも最も重要な分野の1つであり、若い泌尿器科医が魅力を感じることは必然的なことと思います。ちなみに340名の泌尿器科専門医に行った「泌尿器科の中で主にどの分野を専門としていますか?」というアンケートでは、男性の第1位が腫瘍(2位が排尿機能、3位が腎移植)、女性の第1位が女性泌尿器科(2位が腫瘍、3位が排尿機能)で、専門医取得後は微妙に興味が変わるようです。

今日医療の高度化に伴い、1人の泌尿器科医が質の担保されたすべての分野の泌尿器科診療を完結することは不可能で、効率的な分業制が求められています。したがって腫瘍のみならず腫瘍以外の泌尿器科疾患を専門とした泌尿器科医も多く必要です。腫瘍以外の泌尿器疾患はある意味泌尿器科のoriginalityそのものであり、泌尿器科医の”腕の見せどころ”です。診療科の偏在化が問題になりつつある中で、泌尿器科の中での専門分野の偏在化が起きないような対策を、いずれ講じるべき日がくるのかもしれません。

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