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疾患のご説明

前立腺がん

前立腺がんとは?

前立腺は男性のみに存在する臓器であり、膀胱直下にあって後部尿道を取り巻くように存在します。前立腺の機能として精液の一部を構成する前立腺液の産生を行っています。近年、本邦において前立腺がんは増加傾向を示し、2007年の推定前立腺がん死亡数は男性の悪性死亡原因の約4.8%を占めるまでに至っています。

 

症状

早期がんでは自覚症状を認めないことが多いです。他方、進行がんではリンパ節、骨へ転移することにより腰痛、下肢腫脹などの転移部位に応じて症状を認めることがあります。

 

検査・診断

血液検査(前立腺特異的抗原:PSA)でスクリーニング検査を行います。PSA値とがん検出率には相関関係を示しますが、PSAは前立腺に特異的な抗原であるため、前立腺がん以外の前立腺肥大症、前立腺炎、射精等でも上昇します。直腸診、超音波検査、MRI検査等の追加検査も行い総合的にがんが疑われた場合には確定診断を行うため前立腺生検を行います。

前立腺生検でがんが認められた場合には、隣接する臓器である精嚢腺や膀胱へのがんの浸潤の有無及び腺外病変の有無を確認するためCT、骨シンチグラフィーを施行し、病期診断を行います。

 

治療

前立腺がんの治療法は、無治療経過観察・手術療法・放射線療法・内分泌療法・抗がん剤全身化学療法があります。

@)無治療経過観察

PSA検査の普及に伴い即座に根治的治療を必要としない症例もあります。悪性度が低い、陽性生検本数≦2本、腫瘍占拠率≦50%、PSA≦10ng/ml、T分類≦T2のすべてを満たす患者様が対象となります。PSAの時間的推移をモニタリングしながら、定期的な前立腺生検を行い、悪性度の上昇、陽性生検本数の増加が認められた場合には根治的治療の介入を必要とします。

A)手術療法

前立腺を外科的に摘除する治療方法です。病期に応じて開腹手術、腹腔鏡手術が一般的に行われています。近年ではロボットを用いた手術も行われています。

B)放射線療法

外照射、内照射、陽子線治療などがあります。それぞれ適応も異なりますのでご希望がある患者様は担当医にご相談ください。

C)内分泌療法

前立腺がんは男性ホルモンにより増殖するがんと言われています。男性ホルモンは主に精巣と副腎から産生されます。男性ホルモンを抑制する事で前立腺がんの増殖は抑制されます。

D)抗がん剤全身化学療法

内分泌療法が効かなくなった前立腺がん(去勢抵抗性前立腺がん:CRPC)の患者様に行います。ドセタキセルと呼ばれる抗がん剤を点滴投与します。

 

これらを単独または組み合わせることでがんを治療しています。

 

TNM分類

Tx 原発巣の評価が不可能
T0 原発巣なし
T1 触知不能、画像では診断不可能
a 切除標本の5%以下
b 切除標本の5%超
c 針生検により確認(PSAの上昇など)
T2 腺に限局する腫瘍
a 一葉の1/2以下
b 一葉の1/2超
c 両葉に浸潤する腫瘍
T3 被膜を超えて浸潤する腫瘍
a 被膜外へ進展する腫瘍
b 精嚢腺へ浸潤する腫瘍
T4 精嚢以外の隣接臓器に浸潤する腫瘍

 

Jewett Staging System

病期 A 臨床的に前立腺がんと診断されず良性前立腺手術において偶発的に認められた前立腺に局在するがん(incidental carcinoma:偶発がん)
A1 限局性の高分化型腺がん
A2 中、低分化型腺がん、もしくは複数の病巣を前立腺内に認めるもの
病期 B 前立腺に限局する腺がん
B0 触診では触知困難、PSAで精査され組織学的に診断
B1 片葉内の単発腫瘍
B2 片葉全体あるいは両葉に存在
病期 C 前立腺周囲にはとどまっているが前立腺被膜を超えるもしくは精嚢腺へ浸潤している腺がん
C1 臨床的に被膜外浸潤が診断されたもの
C2 膀胱頸部あるいは尿管の閉塞を来したもの
病期 D 転移を有するもの
D0 臨床的に転移は認めないがALPの持続的上昇を認めるもの
D1 所属リンパ節転移
D2 所属リンパ節以外へのリンパ節転移、骨そのほかへの転移
D3 D2に対する適切な内分泌療法後の再燃
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