HOME疾患のご説明 > 腎臓がん

患者さまへ 〜診療のご案内〜

疾患のご説明

腎臓がん

腎癌(じんがん)はどのような病気?

腎臓にできる悪性腫瘍(ガン)の一つです。
腎臓は背中がわの背骨の左右に2個ある臓器で,おもに尿をつくり血液を浄化・調整しています。腎がんは,この腎臓の実質部分の細胞から発生したガンで,腎細胞がんとも呼ばれます。

 

症状

腫瘍が数cmと小さいうちは症状が少なく,気付かれにくいがんの一つとされています。腫瘍が大きくなるにつれて次のような症状が出てきます。

腎がんの三大症状

  1. 血尿(尿に血がまじる)
  2. 腹部腫瘤(腹部がはれる,しこりが触れる)
  3. 疼痛(腹部,わき腹,背中が痛む)

 

検査・診断

腎がんを発見・診断するために,次のような検査が行われます。

・ 超音波検査(エコー検査): 超音波プローブを背中にあて,腎臓に腫瘍の影が無いか調べます。
・ 造影CT検査: 造影剤を血管内に点滴しながら体の断面を撮影します.放射線を利用した検査ですが,体内や腫瘍の詳しい状況がわかり,腎がんの多くはこの検査で診断できます。
・ MRI検査: おもに腎がんと良性腫瘍が判別できないとき,腎がんの進行状況を詳しく調べるときに行われます。

腎がんの腫瘍マーカーは見つかっておらず,血液検査で診断することはできません。
生検(腫瘍に針をさして採取した組織を調べる)は,通常は行いません。

 

腎がんの進行状況の分類

腎がんの広がりぐあい(進行度)は,病期(ステージ)で分けられます。

腎がんの病期分類(stage分類)

ステージ1: 腫瘍が腎臓のなかにとどまり,大きさが7cm以下
ステージ2: 腫瘍が腎臓のなかにとどまり,大きさが7cmより大きい
ステージ3: 腫瘍が腎臓の外に広がっているが,周囲の脂肪は通り越していない,
腫瘍が血管(静脈)の中に入り込んでいる(腫瘍塞栓)など
ステージ4: 他の臓器(肺,肝臓,骨など)に転移がある,腫瘍が腎臓および周囲の脂肪を通り越して,近くの臓器(肝臓,膵臓など)にも広がる(浸潤)

病期の違いにより治療法が変わります。

 

治療法

腎がんを根治する(完全になおす)ために最も確実で一般的な治療法は,手術による完全切除です。放射線治療や抗がん剤治療は,効果があまり期待できません。

 

手術の種類
  • 根治的腎摘除術(片側の腎臓と周囲脂肪を,腫瘍ごと取り除く方法)
  • 早期の段階(ステージ1)であれば,腹腔鏡手術が可能です.ステージ2,3でも腹腔鏡手術が可能な場合もありますが,ステージ2,3の多くは開腹手術で行われます。健常な片側腎の働きに問題がなければ,手術後に透析が必要となる事はありません。
  • 腎部分切除術(腫瘍を周囲の腎組織をつけて部分的に取り除く方法)
  • 早期の段階(ステージ1)のときに行われますが,腫瘍が小さい(4cm以下),腫瘍が外側に突出しているなどの条件が必要となります.手術した側の腎臓の一部が残りますので,片側の腎臓をすべて摘出する場合より多くの腎臓の働きを残すことができます。他方,合併症としてがんの取り残し,術後の出血,尿漏(腎臓の周囲に尿が漏れる)が起こりうるとされています。このような合併症が起こらないよう,腫瘍の大きさや位置から適応を慎重に決める必要があります。問題なく手術が行えれば,腎臓を摘出した場合と予後は変わらないとされています。
  • 転移巣切除(肺などに転移した腫瘍を切除する方法)
  • 肺などに転移があっても,数が少ない,切除可能な部位にある,切除することで明らかにメリットがある場合には,呼吸器外科医などに依頼して手術を行う場合もあります。

 

手術以外の治療法(薬剤での治療)
  • 免疫療法(インターフェロン)
  • インターフェロンなどの注射により全身の免疫力を高める事で腎がんを治療する方法です。手術で根治できない進行期(ステージ4)で行われます。肺転移しかない症例にはある程度の効果が期待できます。
  • 分子標的薬
  • 腎がんの特性の一つである血管新生(ガンが周辺に血管を伸ばしながら増大する性質)を利用した治療法です。この血管新生を薬剤で抑えることでガンを小さくする新しい治療法で,免疫療法が効かないケースでも効果が期待できます。しかし,多彩な副作用が起こる危険性があるため,専門の施設で十分に注意しながら治療を受ける必要があります。

 

腎がんの予後は?

早期に見つかったケース(ステージ1)では,適切な治療(手術での完全切除)を受ければ9割以上は再発なく経過します(5年非再発率90%以上)。他方,進行した状況で発見されたケース(ステージ4)では,分子標的薬などの治療を受けても根治は難しい状況です。

 

当科での腎がん治療の状況は?

当科では,早期の腎がんでは腹腔鏡手術や腎部分切除術を積極的に行っています。
また,腫瘍塞栓があるケース(ステージ3)では心臓血管外科医の協力のもとで根治手術を行っています。さらに,肺転移があるケース(ステージ4)でも転移巣を切除することで予後の改善が期待できるケースでは呼吸器外科医に依頼して,積極的に転移巣切除を行っています。外科切除不可能なケースでは,免疫療法や分子標的薬を用いての治療を行っています。お困りのことがあれば,お気軽にご相談ください。

ページの先頭へ