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疾患のご説明

小児の泌尿器疾患

小児泌尿器疾患について

小児泌尿器科疾患といっても実に幅広く、疾患数は多枝に渡ります。例えば、よく見かける疾患としては精巣が陰嚢内に降りてこない停留精巣、膀胱の尿が腎臓へ逆流してしまう膀胱尿管逆流、そして夜尿症(おねしょ)など挙げられます。また、中には診断と治療に高度な知識と経験を必要とされる先天異常や、手術が容易でない疾患もあります。ここでは日常診療でよく診察することの多い代表的疾患について説明いたします。

 

停留精巣

赤ちゃんのお腹の中で発生した精巣は胎生3ヶ月頃に下降を開始して、8〜9ヶ月に陰嚢内に到達するとされています。結果、精巣は出生時には陰嚢内に存在することになりますが、これが途中で陰嚢まで達せず途中にとどまるものを停留精巣と呼んでいます。停留精巣の病因は十分には解明されていません。停留精巣の自然下降はほとんどが3−6ヶ月頃までに完了するとされてますので、6ヶ月頃までは自然下降に期待し経過をみることが多いです。ただ1歳以降で精巣組織の障害(精細胞の数の減少など)が始まりますので、自然下降しない場合は1歳前後に精巣を陰嚢内におろす手術を行ったほうがよいと考えています。停留精巣は放置すると悪性腫瘍の発生頻度が増加したり、男性不妊症の原因となることがあるので、泌尿器科での診察を受けていただくのがよろしいかと思います。

 

腎盂尿管移行部閉塞(UPJO)

小児泌尿器科領域における上部尿路通過障害の原因として最も頻度が高く、尿の流れが悪くなり腎臓が腫れる(水腎症)疾患です。最近は胎児超音波検査が普及し出生前に診断されるケースが増加しています。これら多くは生後無症候性に経過し、自然治癒する症例が多いのも事実です。無症候性であれば、諸検査にて腎臓の機能の悪化などがないか経過をみていきます。逆に、水腎症が極めて高度でそれによる背部痛や腹部膨満、吐き気などの消化器症状、重度の尿路感染症、腎機能低下による尿毒症、あるいは経過観察中に徐々に腎機能の悪化などあれば、手術の適応となります。手術は低侵襲な内視鏡手術や、開腹手術があります。いずれも通過障害を解除して腎臓の腫れ(水腎症)をなくす手術です。

 

膀胱尿管逆流(VUR)

膀胱尿管逆流とは膀胱内の尿が病的に尿管に逆流する現象を言います。通常は逆流しないような機構が働いていますが、何らかの原因でそれが破綻してしまったことが原因と考えられています。先天性が多いですが、中には排尿がうまくいかないことによって引き起こされる場合もあります。しばしば逆流は腎臓まで及んでいる事が多く、腎機能障害を伴い、敗血症など尿路感染を起こす場合があります。長期的には高血圧の原因になったり、慢性腎不全にまで発展することがあります。治療としては保存的療法、手術療法がありますが、VUR全体の1/3〜1/2は自然消失するとされていますので、まずは注意深く経過をみるという保存的療法を行います。一方、手術の適応については、逆流の程度が増悪している場合、腎臓の機能が悪化してきた場合、尿路感染症を繰り返し起こす場合、思春期を過ぎた症例などがあげられます。手術は主に開腹手術で行われていますが、当科では、いずれ腹腔鏡という内視鏡での手術を導入したいと考えています。

 

夜尿症

夜尿症(夜間遺尿)とは5歳を過ぎて睡眠中に無意識に尿がもれてしまう状態です。乳児期より夜尿が続いているものを1次性夜尿、6ヶ月以上夜尿がなくて再び始まったものを2次性夜尿といいます。夜尿症の原因は十分には解明されていないのが現状です。治療は原因により異なりますが、膀胱訓練や水分制限などの生活指導から、おねしょブザー・薬物療法など多岐に渡ります。

 

包茎

包皮が翻転できないために亀頭が露出しない状態を真性包茎、露出する状態を仮性包茎といいます。真性包茎が占める割合は、新生児はほぼ全例、乳児は8割、幼児は6割、小学低学年は約4割、高学年は約2割、中学生は思春期前は約1割、思春期後は0.5割以下となっています。真性包茎は生理的な状態で、ほとんどが思春期かそれまでに仮性包茎に移行します。真性包茎の治療としては保存療法(ステロイド軟膏療法)と手術療法があります。ステロイド軟膏療法とは手術をせずに仮性包茎にする手法で、包皮を指で陰茎根部にひっぱってめくるような操作をし、同時に包皮口に少量のステロイド軟膏を塗布するというものです。約1ヶ月で70%以上の症例が仮性包茎の状態になると言われています。一般的に手術の適応としては、5,6歳以上で保存療法が無効で、かつ包皮の口が狭いもの、包皮炎があり保存療法が無効なもの、思春期後の真性包茎で保存療法が無効のものなどが挙げられます。環状切開術が一般的な手術の方法となっています。

 

これら疾患のほかたくさんの小児泌尿器科疾患があります。何か気になるようなことがあれば泌尿器科受診をおすすめいたします。

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