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初期研修医の皆さまへ

留学先からの便り

櫛田信博

山口脩前教授、小島祥敬教授、医局の皆様および同門会の先生方の御計らいによりまして昨年の1月よりイギリス、サリー州ギルフォードにあるサリー大学に研究留学させていただいております。こちらで研究を開始して1年と半年が過ぎました。

サリー大学は1966年に創設された比較的新しい大学です。1891年にロンドン近郊に設置されたバッタシーポリテクニックインスティチュートを前身として、新しくギルフォードに移転し創設されました。総合大学であり学部は、Arts and Human Science, Business-Economics and Law, Engineering and Physical scienceおよびHealth and Medical scienceから成り立っております。学生数は約9000人、院生が6000人です。サリー大学に限ったことではないのですが、イギリスの大学は非常に国際色豊かで、キャンパス内は各ヨーロッパ諸国、インドやアラブ各国、中国や東南アジアなど世界各地から学生が集まっています。キャンパスで日本人に出会う機会は残念ながらあまりないのですが、Engineering系の学科にはある程度在籍されているようです。サリー大学に医学部はなく、私はHealth and Medical scienceに6つある学科のうちのBiochemistry and Physiologyに所属さていただいております。

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サリー大学のシンボルの鹿 サリー大学の遠景

 

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張力測定ユニット
膀胱組織の収縮力を
測定しているところです

主任教授のクリス・フライ先生は電気生理学が御専門で、現在は心筋と膀胱を中心に研究しておられます。膀胱に関してはこれまで平滑筋や尿路上皮の研究で数多くの業績を発表してこられました。ラボのメンバーはフライ教授をトップとして、心臓を中心に研究している講師の先生、渡英後ずっと私の研究をサポートしてくれた排尿機能が専門のポスドクのジョン、同じく膀胱の研究をしているもう一人のポスドク、パートターマーの女性と大学院生1名、そして私です。ジョンは今年の7月からポーツマス大学の講師になりめでたく栄転なされました。私の研究テーマですが、こちらでは主に膀胱機能、特に尿路上皮層の働きについて調べています。尿路上皮層は単に尿を貯留する時の電解質に対するバリヤーや感染防御機構として働くだけでなく、排尿機能とくに蓄尿時の膀胱の働きを制御する上で大変に重要であることがわかってきました。当研究室では生理学的なアプローチが中心なので、膀胱壁の組織切片を作製してその張力や薬物に対する反応をみることが研究手法の中心ですが、それ例外にも組織の免疫染色やウエスタンブロッティング、あるいは細胞内カルシウム濃度測定なども教えていただいております。

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今年の5月にイギリスのブリストールで開かれた泌尿器領域の研究会の写真です。
前列の一番右側がフライ教授です。

 

大学のあるギルフォードはロンドンから南西に約40 km離れたところにあります。歴史は古くてウィリアム征服王によって11世紀に建てられた古城があり、作家・ルイスキャロルが「鏡の国のアリス」を執筆した家も残る趣のある街です。石畳でできたハイストリートは150年以上前からほとんど変わらず、16世紀に建てられたギルドホールがシンボルなっています。通りの建物は古いですが、中は最新のブランドショップやデパートに改装されています。イギリスは日本のように郊外型店舗やコンビニがあまりないので、平日、休日問わず街中は多くの買い物客でにぎわっています。サリー州は比較的治安もよくて暮らしやすいのですが、難点はロンドンへの通勤圏に含まれ、高級住宅地も多いこともあって物価が高いということでしょうか。不動産価格も高くて、大学のスタッフによるとギルフォードに家を持つのは大変なようです。ギルフォードからロンドンまでは電車で約35分で行くことができ、週末は10ポンド程度で往復できます。

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ギルフォードのシンボル、ギルフォードキャッスル ギルフォード市街のハイストリートです

 

こちらでは大学が管理しているaccommodation で暮らしています。キャンパス内およびキャンパス近辺には大学管理のaccommodationが多くあり、学生や留学生の多くはここで生活しております。私の部屋はギルフォード市街の北の外れにあります。大学までやや遠いのが難ですが、すぐに市街地を抜けてヒースの原や森林、牧場に出ることができて大変気持ちのいいところです。

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住んでいるフラット
大学へはバスで30分程度です

 

イギリスは一日の中に四季があるとよくいわれるように天候が変わりやすく、朝は晴天でも油断はできません。夏の気温は20度を少し超えるぐらいですが、湿度がほとんどないので日陰では寒いぐらいです。また雪がほとんど降らないため福島の冬と比較すると過ごしやすく感じます。もともと天候はあまりよくないイギリスですが、残念なことに今年は100年に1度といわれるほどの長雨が続きほとんど晴れの日がありません。4月と6月は記録上最高の降雨量で、イギリスのあちこちで洪水騒ぎが起こっています。

 

2012年のイギリスはダイヤモンドジュビリーやロンドンオリンピックでとてもにぎやかな年になりました。これを書いているのはオリンピックの直前なのですが、ギルフォードにもトーチリレーが来たり、大学関連のスポーツ施設で各国の選手が練習を開始したりして雰囲気が盛り上がってきています。

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ロンドンのリージェントストリート
オリンピックへ向けて各国の国旗が飾られています

 

フライ教授をはじめとして研究室の皆様には大変親切にしていただいております。海外で研究生活を送ることができるという、またとない機会を与えてくださいました福島医大の医局関係の皆様に大変感謝しております。

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