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初期研修医の皆さまへ

留学先からの便り

胡口智之
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター

 今回国内留学の機会を頂き2014年4月より東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターで研究をすることになりました。所属先の研究室はがん抑制遺伝子であるp53やSingle Nucleotide Polymorphism (SNP)の解析を行っており、いくつものp53下流遺伝子を報告しております。がん抑制遺伝子であるp53はDNAへのストレスにより刺激され、下流遺伝子を介し細胞周期の停止やアポトーシスの誘導、血管新生阻害、DNA修復など悪性腫瘍の発生や進行を抑制する機能を持っていることが広く知られています。しかし、最近では糖代謝の調節など様々な機能を持っていることが報告されており、今回の留学ではp53の新規標的遺伝子の解明と機能解析が私の研究テーマとなりました。

 学生時代に講義の一環として生化学の実験などを行ったことはありましたが今まで基礎研究にはほとんど縁がなく、4月初めは実験器具を取扱うだけでも大変苦慮しました。しかし、研究室の先生方による指導や自分のアセトアルデヒド代謝酵素などを対象としたSNP解析の実験を複数回行うことにより実験器具の取扱いや操作に慣れることができました。また、同時期に配属となった大学院生が3人もおり、試料の場所や実験プロトコールで忘れてしまっていることを互いに補完できたことがスムーズに研究生活へ入れたことの一因であると思っています。

 研究テーマであるp53下流遺伝子の同定では、まず研究室で蓄えている実験データを使ってp53が発現に関係していそうな遺伝子を絞り込んでいくのですが、2万もある遺伝子の中からp53に誘導される遺伝子を絞り込んでいく作業はなかなか大変であり、関与が疑われそうな遺伝子を見つけてもすでにp53下流遺伝子として報告されているなど一進一退しながらスクリーニングを続けていきました。また、やっとの思いでスクリーニングから候補遺伝子を抽出しても細胞株を用いた実験で思ったような結果がみられず、消えていった遺伝子がいくつもありました。現在、いくつかの候補遺伝子におけるp53結合配列の検索と対象遺伝子を過剰発現させる発現ベクターの作製を行っています。

 研究生活を始めてから早くも4カ月経ち、留学期間の6分の1程が経過してしまいましたが、一歩一歩着実に実験を進め結果を出していきたいと思います。

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